ただ、歯が痛かっただけだ。

またもコラムじゃないし……。歯医者日記。(01.05.27)


歯が痛かった。
ただただ歯が痛かったのだ。
だから、これはコラムではなく、日記だ。
長くなったのでこちらに載せている。「パセリ負傷」と同じパターン。
そんなふうにしてでも、ここに書かずに入れなかったのは、やはり。
だって、ものすごく痛かったから。
それだけなんだけど。

一昨日の夜、突如右上の奥歯が痛み出した。でも、鏡を口に突っ込んで(みんなこういう事すると信じている)、いろんな角度から探してみたけど、どうしても虫歯が見当たらない。
そこにあるのは、三年ほど前に治療した後の白っぽい痕跡のみ。
ということは。
原因は、その治療痕の下の虫歯の進行か、あるいは、親知らずの成長。
バファリンを、用量の二倍飲んでみたが、どうにも収まらず、三時間ほどのたうちまわって、ようやく睡眠。
翌朝、痛みで早起き。で、近所の歯医者へ走る。
土曜、しかも予約なしなので、待ち時間長いだろなー、と、痛む右頬(かろうじて腫れていない)を押さえながら中に入ると。
けっこう広めの待合室に患者さんはおひとり。
やばいなーと、思った。
実際やばかった。
やばかった、ていうか。

やぶだった。

治療に入る前までの説明は、やたら丁寧。
好感を覚える。
先ほどの考えが払拭される思い。
レントゲンを撮るだけでなく、なんかちっちゃなカメラを口に突っ込んで、痛む歯がどうなってるのかを見せてくれた。
昨夜鏡で確認した通り、その歯はパっと見、綺麗なものだ。
老いた歯科医が、見た目だけじゃわからないので、治療痕を剥がしてよいかと聞く。
このままでも2、3日で痛みがひく可能性もあると言う話だったが、歯痛から引き起こされる頭痛も時間ごとに酷くなっていたことだし、ぜひとお願いした。
かぶさってた白いやつが削られ剥がされる。そして空いた穴には風。ピンポイントで何度もあてられる。

「いたくないですかー?」
「あい、いあくあいえう(ハイ、痛くないです)」
ヤブ先生は首をかしげた。
「あれー、ここ、風を当てると、飛び上がるくらい痛いはずなんですけどね?」
「……」(なんで、患者が飛び上がるほど痛くなるようなことを、やってんの?)
それから、またビデオカメラを口に入れて、見せてくれた。
「けっこうな穴があいてるでしょ、いやー、ほんとね、皆、風あてると飛び上がるくらい痛がるんですよー」
「……」(患者によくそんなことしてるんですか?)

結局、昨夜からの歯痛の原因は、治療痕の虫歯の進行、らしかった。
神経がどうにかなってたらしくて、そんで、神経とかなんとかをどうにかしなければいけないらしかった。
らしかった、ばかり。そこらへんは、よくわからないのだ。
丁寧に説明してくれたのは、導入部だけで、治療方法については、全く触れない。ザッツヤブ。

神経を触るに当たって、麻酔を打ってくれた。
「麻酔が効くまで4、5分かかります」と、去ったヤブさん。戻ってきて、わたしの口をこじあけたのは、2分もたってないころ。
そのままいじられて。

わたし、叫んだ。

ええ。歯医者で初めて。
「ひっ」
と、まず声が出た。
そして、その声に驚いてヤブさん手を止めると思いきや、もっと奥に器具を突っ込みやがったものだから、
「ヴアアアアッ!」
と、ケモノのような叫びをあげてしまったじゃないか。
ヤブさん助手さんのふたりがかりで、あごを押さえつけられたから、まともな悲鳴でさえなかった。
恥ずかしすぎる。
涙が出るかと思った。
いやそれは痛みのせい。
痛みで泣くなんて久々。

普通は、患者が叫ぶほど痛がったら、麻酔が効いてないってことで、中断して、麻酔追加したりするだろう。
少なくとも、今まで行ったいくつかの歯科ではそうだったのに。
痛がり、恥ずかしがる私を尻目に、治療は続けられた。
わたしは声を抑えるので精一杯だから、強い痛みが走るたび足が宙に浮くのを、どうしても止められない。それがまた恥ずかしさに輪をかけた。
ヤブさんは言う。
「これはー、痛みはー、昨日がピークだっただろうねー」
いや、ピークは、今ですよ!!
言いたかったけど言えなかった。
そしてあと一つ。
ヤブさんは、Sなんですか?
聞きたいけど聞けなかった。

それからどうなったかと言えば、現在、私の右上奥歯には、美味しくなくて白くて、やや柔らかい物体が仮詰されていて、それを来週、本物に取り替えに行かなければならない。
そんな状態。
わたしは行くよ。
ヤブさんのもとにさあ。
にこにこ笑顔でさあ、だって、他に道はないじゃんよう。

だから誰も聞かないでほしい。
聞きたくても心にしまっていてほしい。

たかこさんは、Mなんですか?

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