赤い風船のこと

結局、一歩も進んでないのかと思うと、どこか頭の隅っこが白く白くなって、座っていることができなかった。
わたしは、くっきり引かれたラインを見た。あんまり明確だったので、ああ、ラインじゃないのかも、壁みたいな実体を持っているのかもと思った。途方にくれた。
片足くらいは中に入れたかな、って思いあがっていたわけです。

わたしでは駄目、あるいは、わたしでなくても良い。
そんなとき、衝動的に手を離してしまうことがある。

幼いある日を思い出す。幼稚園に入った頃だったかな。
アパートの前で、飛んでいった風船を見上げていた。雲の合間に、赤い点が見え隠れしながら消えていった。

手を離しても、そこにあると思っていた。

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